美狐はベッドの上で愛をささやく

その瞬間、わたしの全身が凍りついた。

ゆったりとした気分は、跡形もなく消え失せる。



だって、だってわたしは今、ベッドの上にいる。




わたしは眠ってしまっていた。




ここはどこ?


そして、意識を失ったわたしは、いったい何をしたの?




わからない。


わからない。




もしかして、トラックに轢(ヒ)かれそうになった時、わたしを助けてくれたあの男の人の部屋なのかな?




眠ってしまえば意識を失う。


眠りは、わたしにとって許されないこと。

だって、霊体たちは意識を失ったわたしに乗り移り、魂を汚すため、誰かを傷つけるはずだ。



もしかすると、わたしはあの優しそうな人を、手にかけてしまったのかな……。


奏美(カナミ)さんのように、首を絞めたのかもしれない。




どうしよう。


どうしよう。




わたしは、なんということをしてしまったんだろう――……。


< 50 / 396 >

この作品をシェア

pagetop