美狐はベッドの上で愛をささやく

そして地面にぶち当たって、痛みを訴える……ハズ。


だから痛みを感じないのはおかしい。


それにそれに、階段から勢いよく落下したんだし、大きい音がしてもいい……ハズ。



それなのに、何もないなんて……。



と、いうか……。


あれ?


わたしの体、なんか、あたたかい?


まるで、何かに包まれてるみたいじゃない?




不思議に思って、恐る恐る、閉じた目を開けると――。


そこで茶色い布が見えた。



――え?


――――えっ?


――――――ええっ!?



意味もわからず視線を少しずつ上げていくと……。



「大丈夫? 怪我はない?」

鼻にかかった甘い声が降ってきた。


その声の人は、誰だか知っている。


トラックに轢かれそうになったわたしを助けてくれた男の人だ。


「え? あれ? あの……」



どうしてこの人は生きているの?


< 52 / 396 >

この作品をシェア

pagetop