美狐はベッドの上で愛をささやく

あと少しで傍に行ける。




わたしは手を伸ばし、近づいていくと……。


お父さんの表情が少しずつ強張っていった。

それは、わたしを拒絶する顔だった。




……どうして?


……なんで?


お父さんまで、どうしてそんな表情をするの?


わたしは表情がもたらす意味を知りたくて、口をひらく。



すると、父はものすごいスピードでわたしの傍までやって来て、わたしを押し倒した。


倒された地面の上で、わたしはただただ父を見続けた。


生前なら、決してこんなことをしなかった父――。

なのに、今はわたしを押し倒した。



いつもなら、目元にある皺をくしゃくしゃにして微笑む父――。


なのに、今は目尻を吊り上げ、口元はへの字に曲がっている。


どう見ても微笑んでいるようには見えない。




「どうして? お父さん……」


目の前にいる人物は、どこからどう見ても、わたしの父、美原 清人(ミハラ キヨヒト)さんだ。


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