可愛いなんてバカらしい
大樹くんにとってその噂はひどく傷つくものだった。


引っ越しはあと一週間ほど。


時間はもう残り少ない。


「大樹くん、もう一回紀美に告白しよう!」


大樹くんは私の提案には耳を貸さなかった。


「もういいよ。俺、フラてんだし。」


私にとって途中で諦めるのは論外だ。


「一回ふられたぐらいで諦めてんじゃないわよ!
そんなくらいで諦められるってことは紀美のことそんなに好きじゃなかったのね?」


「そんなことねぇよ!」


「じゃあ.........じゃあ、もう一度頑張ろう?」


大樹くんは「考えとく」と言い会話にピリオドを打った。


「二人....うまくいくといいな....」


この時、私は気づかなかった。


すでに歯車は回ってしまっていたことに。
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