Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編

雪菜~アルベルトエピローグ







『……それで、彼女は屋敷でなく別邸へ?』

『はい。わたくしも静かな暮らしが望みでしたから。両親も了承くださいました』


カイ王太子にはとうに報告が上がっていただろうが、長年仕えた主人には自ら報告するのが義理だと思い、こうしてすぐに面会を叶えて頂いた。


謁見の間ではなく仕事場である執務室で、というのが私たちらしい。執務に入る前にそういったプライベートなやり取りはあまり無かったことだ。


ましてや、王太子殿下ではなく私個人の事情。いち臣下に過ぎない私に、王太子殿下がそれを許すのは長年のよしみがあるからだ。


男前な雪菜からプロポーズされ、私もプロポーズし返してから1ヶ月。雪菜は周囲の全てを整理してヴァルヌスへ身一つでやって来た。


一度彼女を伴って帰国した折に両親や周囲からの承認は得た。やはり高宮の養女というステータスは絶大だった。おまけに王太子妃殿下の後押しもあるのだ。一介の臣下である両親に否が言えるはずもない。


結局、古い慣習に縛られた両親は身分と権力には逆らえない。それを逆手に取って高宮と王太子との繋がりで決着を着けた。 卑怯かもしれないが、私だとて下げたくもない頭を何度も下げた。日本人では謝罪や挨拶で軽く頭を下げるが、こちらでは主君や神以上の相手で無ければそうそう頭は下げない。かなりの労力は要ったが、雪菜のためと我慢に我慢を重ねたのだ。

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