Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



マリアがこちらへ来い、と目配せしてきた。他人から見ればほんの一瞬視線が交わっただけだろうけど、幼なじみだから判る。


(マリアめ……桃花を見に来たな)


淑女めいた笑顔の下では、絶対に面白がっている。たびたびドレスに触れるのは、笑いを堪えている時の癖だ。マリアはオレと同じように幼い頃から訓練されているから、人前ではいくらでも表情を作れるが。どれだけこちらをからかいたがっているんだ。


(まったく……そのためにわざわざオーストリアから来るなんてよほど暇なのか、マリアの会社は)


呆れ半分で思わずマリアの名前を出せば、何だか桃花の様子がおかしくなった。やたらよそへ行かせようとしてる。


もしもマリアの意図に気づいて勧めてきたなら素晴らしいが、たぶん違う。一見料理に夢中になっているように見えても、どこか不安定に感じて放ってはおけない。


だから、桃花を見遣るしかない。彼女が何を考えているのか訊こうとしたのに、わざとらしく料理の話をするから、話しかけて来ないでという空気がひしひしと伝わってくる。


(お願いだから、ひとりにして)


彼女のそんな訴えがズシンとこちらへ響く。なにか機嫌を損ねるような失敗をしてしまっただろうか? いくら思い返してもわからない。


今、こんなに拒絶されてるのにマリアに紹介もないだろう。マリアの協力を得るために必要なことでも、桃花が乗り気でなければ意味がない。


結局、周りを牽制してから桃花をひとりにするしかなかった。


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