生意気な年下の彼
 そっと彼女の肩を抱き、自分の元へ引き寄せた。
 軽く息を吸い、驚きを表す先輩。顔を伏せているけど、真っ赤になっているのがわかる。

「何だと思う?」

 近距離だからと囁いたのが、先輩にとって大きな刺激になったようで、一瞬体をすくめた。
 やばいな……神経が鈍ってきた。

「……言えない」
「何で?」
「恥ずかしいもん」

 素直すぎる反応に、思わず笑いを零す。

「恥ずかしいことなんだ」

 先輩はしまったと顔に書き、俺を見つめる。そして小さく「イジワル」と呟いた。

「恥ずかしいよ。和真くんが私のこと名前で呼ぶくらいは」

 意外な引き合いに、何のことかわからず、俺は不思議そうな顔をして先輩を見た。

「?別に先輩のこと名前で呼ぶの、恥ずかしくないよ」
「そうなの?私、てっきり恥ずかしいから呼ばないのかと思った」

 最初の出会いから先輩って呼んでたから、その延長線上に過ぎなかったんだけど───もしかして、名前で呼ばれたかったのかな?

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