ナイト!
***




生徒会室の奥の部屋へ入る瞬間、七瀬さんと肩がぶつかった。


彼女は何も言わず、ただ走っていった。



ぶつかった肩を触ると、水滴がついていた。



ーー泣いていた?




「……なんだ、お前もいたのか」



室内を見渡すと、奥のテーブルに腰掛ける男の姿が。



珍しく意気消沈している、というのか。

それとも、ただ静かに怒っているのか。




「…圭人」

「…学校では名前で呼ぶなと言ってる」

「俺は別に呼ばれてもいいんだけどな」



いつもの悠々とした顔ではなく、痛々しいほとの笑顔を向ける。




「七瀬さん」

「………」

「泣いてたよ」

「……知ってる」

「そうか…」



でも、お前も、泣きそうな顔をしている。



「最後のチャンスを、取り逃がしたってことか」

「……だな」

「もっと早く手を打つべきだった」



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