さくらへようこそ
彼が目を覚ますのはもう少しかも知れない。

自分が帰ってきたら起こしてあげよう。

美桜はそう決めると、ドアを開けた。


7時になると、日が昇り、ほんの少しだけど温かくなってきた。

自転車に乗って美桜が向かったところは魚市場だった。

そこはもうすでに活気であふれていた。

「おはようございまーす」

魚を発砲スチロールに入れている顔見知りのおじさんに美桜は声をかけた。

「おう、さくらちゃんおはよう」

「今日は何かいいの入ってる?」

目の前に並べられている魚たちを観察するように見ている美桜に、
「今日はね、いい秋刀魚が入ったんだ」

おじさんが言った。
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