また、キミに逢えたなら。
部屋に戻り、読みかけの小説を手にしてベッドへ腰掛ける。
すると
ーーコンコン
タイミング良く部屋のドアがノックされたのと同時に、引き戸がスーッと開いた。
返事をする隙もなかった。
それを見て軽いため息を吐く。
こんなことをする奴は、俺の知る中では一人しかいない。
「よっ!お待ちかねのたもっちゃんだよー」
手をブンブン振りながら入って来たのは、幼稚園からの腐れ縁の羽生 保(はにゅう たもつ)。
こいつだけは昔からなぜか俺にまとわりついて離れない。
“病気”の俺を知ってもこいつだけは変わらなかった。
陽気というか能天気というか
何を考えているのかさっぱりわからないけど……まぁ悪い奴ではない。
「別に待ってないし」
「またまたー。俺が来なくて寂しかっただろ?」
「うるさいのがいなくて清々してたところだ」
「うわ、ひどっ。せっかく来てやったのに」
「別に頼んでない」
笑ったり険しい顔になったり、表情がコロコロ変わるそんな保に淡々と返す。