Baby I love you !!
あの夜


「おめでとうございます。」

まるで、保健室の先生みたいに優しそうな先生が穏やかな笑顔で私に告げる。

矢沢一華(イチカ)、26歳。独身。

「今、8週目に入ったところです。え~っと、予定日は~…来年の5月頃ですね。」

ー妊娠2ヶ月。

先生は色々と説明してくれたけど、正直ほとんど頭に入ってこない。

「あの……」

ただ呆然とする私を見て、先生は何かを察したように、回転椅子をくるりと回して私の方に体を向けた。

「矢沢さん、独身でしたね。お相手の方とは、きちんと話せそうですか?」

お相手の方…その言葉で、頭に浮かぶ1人の男。彼の名は成瀬有志(=ナル)。

「…わかりません。」

口から出たのは情けない答えだった。

ナルとは恋人同士じゃない。私にとって彼は、小学校から腐れ縁の男友達。彼にとっても私は、ただの友達。愛しあってた訳でも、付き合っていた訳でもない。

そんな彼とそういうことになってしまったのは、二ヶ月半前のあの日。

共通の友人である直哉の結婚式で三年ぶりの再会を果たした私たちは、二次会で盛り上がって、そのまま…一夜を共にしてしまった。完全に、酔った勢いでのことだった。

「矢沢さん、これ見えます?」

今にも泣き出しそうな私の前に、先生がそっと差し出したのは、ドラマとかで見たことある白黒のエコー写真。

「この小さな丸。これが赤ちゃんです。」

先生の指先には、直径5mmくらいの小さな小さな白い点。これが、赤ちゃん…?

「ちいさい…

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