意地悪のっぽと強気ちび
私が気付いてそちらを向けば、さっきまでどっしり座っていたはずの結城くんは腰を上げて華奢な女の子を支えている。
女の子の足には結城くんの机に掛かっていた鞄の紐が引っかかっていて、どうやらその紐にひっかかってしまったみたいだ。
「大丈夫?怪我はない?」
「あっ、うん……ごめんね鞄に引っかかっちゃって」
「いいよ別に。怪我がないならよかった」
……………誰だよ!とツッコミたくなるほどの親切さに鳥肌が止まらない。
にこり。と笑った結城くんの笑顔は私の見たことのないそれで、私の顔が嫌悪で歪む。
何それ。私にはそんな笑顔見せたことないくせに。
むしろ今だって足引っかけて転ばせようとしてきたのは結城くんじゃん。
優しい手つきで女の子を立たせる姿に、言い返そうとしていた気が削がれた私は、そのまま何も言わずに静かに席に着いた。