好きとスキが重なった日
マンションの中に入ると、部屋の番号を悠真が華麗に入力して、本館へ入っていった。

その後エレベーターに乗って、7階のボタンを押す悠真…


「悠真…」


「お前が怖じ気づいてどうする?
二人ならきっと無事だ

二人を信じろ!美莉亜」


しばらくして由紀さんの部屋の前に着いた私達。
着くのと同時に、悠真が何度もピンポンを鳴らした。

何も返答がないのを知ると、部屋のドアノブをゆっくりと回す悠真。


「扉開いてる…
きっと由紀が俺に助けを求める為に、開けたのかもしれない

行くぞ!美莉亜」


何の断りを入れず玄関に上がると、男物の靴が乱雑に脱ぎ捨てられていた。

もしかして、篠塚蓮の靴!?

綺麗に整頓されている玄関。
本当に綺麗好きな人なんだなぁ~。


「美莉亜!何してる!」


私が玄関に見とれていたのか、悠真が咄嗟に声をかけた。
私は我に返ると靴を脱ぎ、その靴を整頓してから部屋の中に上がった。


悠真は私をお構いなしに、先に部屋の中に入ったみたい。


部屋の中に入るとそこには、果物ナイフを持った篠塚蓮が由紀さんに近づいていて、それを守るように由紀さんの先頭に立っている悠真がいた。



「誠人、止めろ!
由紀まで巻き込むな

お前が憎んでるのは、この俺だろ?
由紀は関係ない!

もし由紀をその果物ナイフで刺すっていうなら、俺を刺せ!

俺は、由紀や誠人に六年前…
本当に申し訳ないことをした

二人に謝って、俺は許してもらうつもりなんかない

俺は誠人や由紀と、また前みたいに仲良くしたいんだ!
また三人で笑っていたいんだ!

だから誠人、早まるな」


「違う!俺はもう悠真のことなんか憎んでない

自分自身に憎んでいるんだ…
悠真とあの日絶交したこと、後悔してる

俺がもっと強かったら、由紀を守れたのにって ずっとそのことを抱えて生きてきたんだ・・・

もう俺だって苦しいんだよ

悠真は、神崎さんがいて幸せ者だよな?

俺にはもう、何もない
何も残されていないんだ」


嗚咽混じりに、涙を流しながらそう言った篠塚蓮は、果物ナイフの刃を自分に向けた。


「よせ!止めろ!
俺が何としてでもお前を絶対に止めてやる

誠人を死なせたりはしない」


そう言った悠真は意を決したかのように、バスケ部でつちかってきた走りを活用して、シュートを決めるかのように、素早く果物ナイフを奪い取ろうとした。


だけど篠塚蓮も強気で、中々その果物ナイフを放さない。



「何で俺の為に、そこまでしてくれんだよ?」


「それは、俺達が親友だからだろ?
長年寄り添ってきた仲じゃねぇか!

俺が今度こそ、お前ら二人を守ってやるよ!」


「悠真…ごめん」


そう呟いた篠塚蓮は、果物ナイフをおもいっきり振り回した。


そのナイフが………


運悪く悠真のお腹に刺さってしまうなんて、誰もが予想だにしていなかった。


お腹から血を流す悠真…

悠真は刺されたにも関わらず、片手で刺されたお腹を押さえ、もう片方の手で、篠塚蓮の腕を必死に掴んだ。


篠塚蓮はひどく額から汗を垂れ流し、発作みたいに息が苦しくなっている。



篠塚蓮は悠真を引き離そうとした、ただそれだけなのに・・・
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