不機嫌主任の溺愛宣言

――誕生日、一華は何を用意してくれるのだろう。もし彼女が俺の為に頭を悩ませてくれているとしたら……なんて嬉しくて、しかし心苦しい事なんだ。

今日も今日とて、忠臣はそんな惚気た事を考える。いつものようにデパ地下の巡回をし、異常や問題が無い事を厳しく見渡し確認すると、最後に視界の端に一華を捉え、彼女の可憐に働く姿をバッチリと脳内に納め幸せな気持ちで巡回を終えるのだった。

事務所に戻る途中、忠臣のガラケーが着信音を鳴らした。それは服飾担当主任からで、地下食品の資材が幾つか3階の倉庫に紛れ込んでいるから取りに来て欲しいと言うものだった。連絡を受けた忠臣は1度事務所に戻り、右近を連れてから3階へ向かう。

忠臣があまり足を踏み入れることの無い福見屋デパート3階は、主に女性の衣類を扱っている専門店のスペースだ。それもナイトウェアやランジェリーの店が立ち並ぶ。エスカレーターから店内の売り場を抜けて奥の倉庫へ向かおうとする忠臣と右近には、正直目のやり場に困るスペースでもあった。

女性客に不快に思われないよう、なるべく視線を売り場に向けずに早足で通り過ぎようとする。しかし。

「主任?」

どういう訳か、右近が振り向けば忠臣はピタリと足を止めランジェリーショップの一角に釘付けになっていた。

「ちょ……!主任っ!何してるんですか!?変態だと思われちゃいますよ!」

右近は小声で叫ぶと慌てて忠臣の腕を引っ張る。その言葉通り、眉間に皺を寄せながらスクェアフレーム越しに鋭い眼差しでマネキンのランジェリーを凝視する忠臣は、ハッキリ言って不審者にしか見えない。

右近に腕を引かれ我に返った忠臣は「す、すまない」と焦って再び歩き出したが、何度も振り返り名残惜しそうにマネキンを見やる姿は益々変質者そのものだった。
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