表の顔☆裏の顔
背筋を伸ばして、ヒールをカツカツと鳴らしながらお客様の待つボックスへと足を進める。

「失礼します」

春奈の声に反応して

「やぁ春ちゃん。会いたかったから会いに来ちゃったよ」

「近藤さん、ありがとうございます。お久しぶりですが、元気にされてましたか?」

春奈がニコっと笑って話しかけると

「もぉダメ。春ちゃんの顔が見れないだけで寂しくて寂しくて.....」

と、顔を赤くしながら話すのは、近藤一樹-コンドウカズキ-。

近藤は春奈の大ファンなのだ。
それもそのはず。
春奈はモデルのようなスラリと細身の長身に加え、容姿端麗なのだ。
そのうえ、気遣いができ、どんな話しも嫌な顔一つせず気長に聞いてくれると評判なのだ。

「まぁ近藤さんたら私が嬉しくなるような事ばかり言ってくださるのね」

ニコッ。
この笑顔、無自覚だから破壊力がすごい。

「い.....いや.....思った事しか言ってないから」

えっ?
そんなにここに来られなかったのが寂しかったのかなぁ?
と思いながら

「寂しくなったらまた覗いて下さいね」

「.....春ちゃんに伝えるのは大変だな....」

えっ?
近藤さん何て言ったんだろ?
小さ過ぎて聞こえなかった。
悲しそうな顔してたような......

考え込んでいると

「....ちゃん。春ちゃん!もぉ今日は久しぶりなんだから楽しく飲もう?」

そう言われ考えるのをやめた。
それから近藤から最近あった出来事や、仕事のはなしなど、一時間ほど話した。

「春ちゃん。今日はそろそろ帰るよ。もっとゆっくり春ちゃんといたいけど、明日から海外出張なんだ。出張に行く前に春ちゃんの顔が見れてよかった。また帰ってきたら覗くからよろしくね。」
と言ってテーブルを立った。

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