【短】真夏のmystery kiss*+.



そう思うと、

さっきまでの緊張から解放されたようで

力が抜けた。


「てかナツはなんで俺が何してたか気になったの?」


しっぽでも振ってそうにわくわくしながら聞く彼に、

気が抜けていた私は紫の

『だって万が一彼じゃなかった時に、

他の誰かが夏愛のほっぺにキスしたなんて知ったら、

落ち込むどころじゃない、でしょ?』

なんて言葉はすっかり忘れて、


ずっとそうだと思ってきた

なんでも話せる気の知れた幼馴染相手として、

リョウにさっきあったことを話してしまった。


「……で、紫がリョウだって言うから、

私はありえないと思ったけど、一応聞いてみたんだ。

ありがとね、教えてくれて」


そう言って彼を見ると、

彼の顔からはいつものニコニコした表情が消えていた。


「え……リョウ?」


急に変わった表情にびっくりして

名前を呼ぶと、

はっとしたように、眉を寄せて私を見た。


「ナツ……」「まもなく――」

彼の口が、彼だけの私の呼び方に動いた時、

バイト先の最寄駅に着くというアナウンスが耳に入った。


< 19 / 65 >

この作品をシェア

pagetop