【短】真夏のmystery kiss*+.
お互い何も話さないまま
電車は動きを緩めていった。
そしてついにドアが開いた。
「あ、私今日バイトだから……ここで降りるね」
そう言って、気まずいままリョウに手を振って
電車を降りた。
なんであんな反応したの……?
不安なままホームを進もうとすると、
ぐいっと手が掴まれて足を止められる。
「えっ……リョウ?」
私たちの家からの最寄駅では全くないのに、
リョウも電車から降りていて、
私の手を掴んで、真剣にこっちを見ている。
「ナツ、俺、ナツのこと女の子として好きだから。
俺の気持ちが
ただの幼馴染としてじゃないってこと、わかる?
俺もひとりの男だから。
……じゃあ、バイト頑張って」
そう言い終わると、
電車のドア閉まりかけギリギリで
再び乗車して、リョウは行ってしまった。
私は見たことないリョウの真剣な表情と
聞いたことない大人っぽい声に唖然となって
しばらく動けなかった。
あの、リョウが、
私を、異性として、
好き……??