確信犯



小さな会社だけれど。


日中はほぼ、全員出払っている。






私が、買い物や銀行へ行く時は。


設計士の人が留守番をしてくれた。






社用の軽自動車を運転しながら。


ガソリンスタンドに寄る。






何を隠そう、この運転。


普段しないから神経を張り詰める。






音楽やラジオに。


耳を傾ける余裕はない。






だから運転中は静かで。


無駄に、思い出す。






白澤印刷を退職直後。


匠と交わした、会話全てを。






退職日ギリギリになっても。


私は匠に、退職報告をしなかった。






資料をまとめ終えてから。


『これからはご自分で』と。


頭を下げて立ち去った。





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