確信犯
片手で器用に電話をかけながら。
片手でベビーカーを押す。
匠は電話で、白澤有雅と自分の直帰を会社に告げていた。
ホテルの地下駐車場で、匠の車に放り込まれて。
「住所、言え」
匠から投げられた言葉に、ドコか安心を覚える。
関わるのは終わり
もう逢うコトもない
そういう、態度だった。
だったら、ますます。
住所なんて言えない。
「実家……和菓子屋」
頭を巡らせて答えると。
「そ。じゃ、その前に俺ん家。必要なモン、全部持ってる?」
匠は。
子供のコトを言ってるようで。
私は、頷いた。