確信犯



息苦しさに襲われたまま走って、辿り着いた隣の家の玄関先。


必死にドアを叩いた。






ドアの隙間から、姿を覗かせた婦人に説明しようとしたら。


私の声は、出てこなかった。






音に、ならない。


喉が使えない。






苦しくって、苦しくって、溢れる涙をしゃくりあげながら。


一生懸命、婦人を引っ張った。






ただならない私の様子に。


婦人は大声で、ご主人を呼んだ。






私は、喉を掻き毟って。


自分の家まで先に走った。






自分の家に飛び込むと。


部屋の様子を見る勇気がなくて。






追いかけてきたご夫婦に、部屋を指で示して――


あとは、覚えていない。





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