確信犯

❇~❇~❇



彼は。


私の名を、呼ばない。






あれは……雷が鳴り響く夕方。


業務後、白澤印刷の会長室まで行くようにと秘書課から連絡が入った。


私が呼び出された理由は、不明。






秘書の姿が見えない薄暗いフロアで、重厚な扉をノックしたら。


入室を促す声がした。






心を決めて会長室に入ると、私を呼び出した相手が机越しにいる。


白澤印刷会長、白澤有雅さん。






確か、50歳前半。


食事会で話した事のある息子、白澤匠室長とさほど似ていないけど。


品があって、切れ長の目元が涼しげで、大人の男性の色香がある。






頭を下げた私に。



「奥平(オクダイラ)さん、だね」



艶の滲んだ、力強い声が届いた。





< 267 / 500 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop