私と上司の秘密
「あのー、圭介のご両親にもご挨拶とか、
子供が出来たこととか、伝えなければいけないんじゃないですか?」

「俺の方は、いいんだ。」

「どうしてですか?」

『聞いてはまずかったのかな?』

「凛の頭の中で、俺の親、いないことになってない?」

「あっ、いえ、そういう訳では…。」

「バレてるって。」

て言って、圭介は笑っていた。


「俺の両親は、ちゃんと健在で、今、仕事で
海外に住んでるんだ。
もう俺、いい年だし、全部俺の判断に任せて
くれてるから、報告だけでいいんだ。」

「それで、いいんですか?」

大丈夫なんだろうかと心配になる。


「いいんだよ。
心配しなくても。
そろそろ、家出る時間じゃないか。」


圭介の言葉に私は時計を見た。


『急がなきゃマズイ。』

慌てて通勤バッグを持とうとした時、

「そうだ、俺があげた指輪、必ず、していけよ!」

『必ず』という言葉を強調して、話してきた。


「恥ずかしいです。」


「駄目だ!」

そう言って、

『高そうで無くしたらどうしよう』

と思って大事にしまっておいた指輪は入った
入れ物を圭介は目の前に持ってきた。「はい。
これ付けて。」

と、圭介に左手の薬指を掴まれ、強引に指輪をはめられた。


『圭介の顔が必死に見えるのは、気のせいだろうか…。』

しかし、そんなプライベートでしか見せない姿も好きな私は、圭介には伝えないでおこうと思った。
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