記憶ノ時計
どうしてこんなに涙が出るんだろう。


記憶がなくなる前の私は、いったいなにをしてたんだろう。


私は一人きりの部屋の中で、床にうずくまって泣いていた。


「うっ…」


涙があふれて止まらない。


何故泣いているかというと、自分がどういう人間なのかわからなくなったから。


さかのぼること30分前、怜馬が言った言葉。


『俺たち、つきあってるんだよ。今まで隠してて…ごめんね』


そのとき、私はなにも言えなかった。


怜馬は、黙っている私を見て、まだ受け入れられないんだと思っている。


怜馬は私のことを思い、『いきなりごめんね』と言って部屋を出て行った。


怜馬が出ていったすぐあとに、私の目からボロボロと大粒の涙が流れてきた。


『俺たちはつきあっているんだ』


『俺たち、つきあってるんだよ』


涼馬と怜馬の声が同時に重なる。


私は…記憶のあるときの私は…二股してたってこと?!


そう思ったら絶望感と罪悪感で立っていあられなくなった。
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