BEAST POLICEⅡ
そう思った瞬間、足から力が抜けていく。

ガクガクと膝が震え、言う事を聞かなくなってきた。

まだここで止まる訳にはいかない。

こんな場所で立ち止まったら、あのゾンビ同然の中毒者達に肉を食まれるだけだというのに、どうしても足が動かない。

よろめく足取りは、背後から迫ってくる中毒者達と同じ。

ズルズルと摺り足で、生ける屍の如く歩を進める。

そんな美奈の目前に。

「!!!!」

蹲っている少女の姿があった。

10代くらいの少女。

母親なのだろうか、女性の遺体の前でしゃがみ込んでいる。

目の前で人の死を目の当たりにして、絶望したのか。

そこから動こうとしない。

「逃げて…!」

美奈は掠れた声で叫ぶ。

自らが追い詰められつつあるにもかかわらず、少女を助けようと叫ぶ。

こんな所で立ち止まっては駄目だ。

生きる為にも、立ち止まっては駄目だ。

そう訴えかけるも。

「…………っ」

その少女が振り向き様に、遺体の臓物を両手で差し出し、無邪気に微笑むのを見て、美奈の張り詰めていた糸は切れた。

少女もまた、中毒者だった。

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