ぬくもりを感じて
凛花は着替えて、手を洗って智樹の手伝いをし始めた。


「智樹さん・・・遠藤先生と何してたかきかないの?」


「映画見て、ゲーセン行ってきたんだろう。」


「まぁそうだけど・・・。」


「何かきいてほしいことでもあるのか?」


「べつにないけど!(どうしてむさ苦しいおっさんになったかきいてみたいけど・・・)」


「ないけど?」


「もう、いいわ。盛り付けできたし、いただきます!」


「ああ、しっかり食ってくれ。
それと・・・遠藤先生が何か僕のことをいったのかな?」



「うくくく・・・苦しい・・・み、水・・・。」


「言ったんだな。」


「うん、はぁ・・・苦しかった。
先生は昔は学校のアイドルみたいに人気があったの?」


「は、はぁ?」


「浩太郎情報を1つ教えてくれたの。
学校で以前、アイドルみたいに人気のあった先生の話をね。

でも今はむさいおっさんになってしまったって。」


「なぜなんだろう・・・って想像しない方が不思議ですよね。」


「そうだな。
いずれその分じゃわかってしまうだろうから、正しいことを教えてやろう。

毎日女の子から追いかけられたりするのも迷惑だったけれど、研究室に勝手に入られるのはいちばん嫌だった。
それに、危険な生き物が居てることもあってね。
ふだんは鍵をかけておいたんだ。」


「当時、自由奔放で遊んでた女生徒がいてね・・・彼女は妊娠したんだ。
もちろん、相手は僕じゃない。

彼女は親にも言えない相手だったのか、どうやら僕を代役にしようと考えたみたいで、生物準備室にやってきた。
そしてこともあろうことか、たまたま僕がちょっとトイレに行ってたときにきて、いちばん奥の研究室まではいってしまったんだ。

そのとき・・・研究室の鍵はかかってなかった。
だから、ある学者から預かっていた毒ヘビがケースから出ていたことも知らずにね・・・。」


「かまれたんですね・・・その人。」


「ああ、念のために血清も用意してあったから、かまれたのが僕なら問題なかったんだ。
でも・・・彼女は妊婦でね。
一命はとりとめたけれど、赤ちゃんは毒かショックだったのか理由はわからないけどダメになった。

僕は彼女のご両親に誤解されたまま・・・彼女は謝って退学した。」


「先生は何もしてないでしょ。
ただ、トイレに行ってきて研究していれば何もなかったんだし。」


「危ないものを取り扱っているんだから、生徒を寄せ付けるなんてしてはいけなかったんだ。
それか、生徒のいないところで研究すべきだった。

それにここは学校だという認識が薄かった。
心のどこかに、親父や兄が提供してくれたところだという意識があった。
どうせおねだりするなら、研究施設を別に用意してもらえばよかったんだ。

けど、もうそれもやめたよ・・・。
今は生き物の研究をしたいときだけ、専門の機関へ訪問することにしてる。

それと、学校にふさわしい人間であろうと思ったから。」
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