ぬくもりを感じて
瑞歩はじっと凛花の顔をながめながら目を細めていた。


「なっ、何よ!なんかいやらしい!」


「いや、いいことだと思ってるんだ。
凛花はアメリカで最後に俺にあったときのことを覚えているか?

研究に熱中していたから、やる気に満ちて元気だったけど、色気がまったくといっていいほどなかった。
なのに、今は、目がうるっとして俺は兄貴なのに、女に見つめられている気がしてるぞ。」


「えっ、色気なんて・・・。年だってとってるし、記憶がもどってないもどかしさもあるから不安なだけだと思う。」


「そうかなぁ・・・。
もしかして、智樹と特別な関係になっちゃった?」


「せ、先生はそういう人じゃないわ!
それに、学校にはセルジュだっているし。」


「セルジュがどうして?
あいつは凛花のボディガードだったろう・・・?
おまえを逃がすために負傷したけど、どうして学校なんかに?」


「えっ、私を逃がすために負傷って・・・逃がすため?
あれ・・・えっ?

ううっ・・・頭が痛いっ!」



「凛花っ!!!どうした?
具合が悪いのか、病院に行こうか。」


「うっ・・・うう・・・。
はぁはぁ・・・あれは・・・!

お父さんとお母さんが入った店に車が突っ込んであっという間に2人が・・・。

それを見てた私・・・そう、私あの日、両親が日本へもどるからって見送るつもりで2人の後からセルジュと追いかけたんだった。

2人のことでショックを受けていたら、何者かが私を殺そうと銃を撃ってきたのよ。
それで、私は逃げようとして・・・そしたらセルジュが私をかばって撃たれて・・・それで私は近くのホテルから逃がしてもらって、日本へと・・・。

そう、だからパスポートと貴重品しか持ってなかった。
あれ?じゃあ、どうして智樹さんの家に着いたら着替えができたの??」



「セルジュだ・・・。セルジュが大樹さんに連絡したんだ。
空港でセルジュの名前で着替えとか日用品を届けさせた人がいたんだ。」


「あっ・・・。
ってことは、学校の養護教員で遠藤先生になっていたのも・・・?」


「大樹さんの会社とセルジュは何らかのつながりがあったということだろうな。
セルジュは先生になっても、おまえを守っていたことになる。」



「そんな・・・だって、もう怪我で足が思うように動かないから、ボディガードはできないって。」


「へぇ・・・あいつがそんなことをねぇ。
何をおいても凛花を守ってたくせになぁ。」


「お兄ちゃんどうしてそんなこというの?
セルジュは普通にボディガードをしてくれてたんじゃ・・・?」


「俺からみれば、実の兄貴が嫉妬してしまうくらい、おまえをかわいがってたぞ。
だから、学校で先生をしてたなんていうから、絶対おまえとどうにかなってしまったんだとばかり・・・。」
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