「異世界ファンタジーで15+1のお題」三




「ふぁあ~~…」

思いっきり両腕を伸ばし、大きなあくびをしたセスがフォルテュナの方を振り向いた。



「すまなかったな…まさか、こんなことになるとは思わなくてな。」

いつもより少しかすれた声でセスが言う。



「確かに驚いたよ…」

そう言いながら、フォルテュナは口許を覆いながらゆっくりとあくびをした。

ちょっと腹を満たすつもりが、二人の思惑とは裏腹に、食事もそこそこに店の客達からの質問攻めに遭ってしまった。
しかも、それだけでは終わらず、フォルテュナ達のことを聞きつけた者達が店に押しかけ、宴会のような大騒ぎが朝まで続いたのだった。



「ま、飯代をおごってもらえたのはラッキーだったけどな。」

「あれだけしゃべって食事代だけだったら引き合わないよ…」

「それもそうだな!」

セスのその言葉をきっかけに、二人は顔を見合わせて笑った。
明るい日差しの元に、二人の笑い声が響き渡る。



「そういえば、セス、この先にはもうあんな洞窟はないの?」

「多分な…あんたの町の方がどうだったんだ?
似たような洞窟は他にもあったのか?
反対側はどうなってた?」

「実は…よく知らないんだ。」

「知らない?……ってことは、やっぱり、あんたもそんな話は聞いたことがないってことだよな?」

フォルテュナは曖昧な微笑みでそれに答えた。
セスのことは信頼出来る人間だと思っていた。
「友達」と呼べる程に…
だが、それでもフォルテュナは、自分がこの世界の住人ではないということを話すことを躊躇った。
他の誰もが信じてくれなかったとしても、セスなら、きっと真剣に聞いてくれるだろうと思えた。
それでも話す気になれないのが、フォルテュナは自分でもどこか不思議な気分だった。



「世界を隅から隅まで旅した奴なんて、そうはいないよな。」

「えっ?
あ…あぁ、そうだね。」

「なんだよ、またか?」

「またって?」

「あんたは本当によくぼーっとするんだな。」

おかしそうに笑うセスに、フォルテュナもつられて笑みを漏らす。



(不思議だね…
能力をなくすと、その代わりに感情がよみがえるのか…
僕は、ここに来て本当に人間に近付いた…)



「なんだ、フォルテュナ?今度は思い出し笑いか?」



(本当に、僕は……)



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