5日だけの二人
あの日、電車の窓越しに少女を見かけてからちょうど1ヶ月が過ぎた。 彼はそんな出来事なんて完全に忘れて毎日を過ごしている。いや、もし覚えていたとしても、それは彼の人生に対して大きな意味は無いし、気にするような事でもないだろう。しかし、偶然の出来事とは、起こってしまったからこそ偶然だと言われるのだ。そう、彼は再び少女の姿を目にする。それは前回同様に偶然に電車の外を見たからに他ならない。
あいつ一体何やってんだ? 体操か? それとも新しい宗教だろうか? 1ヶ月前と同じ様に、電車の窓から見かけた彼女は、何やら右手を真上に上げながら左手を真横に突き出し、更にはそれを素早く入れ替えたかと思うと、すぐに元に戻す。体操にしてはリズムが悪いし、宗教にしては機敏すぎる。そしてまた、その彼女は無表情のまま彼のほうを見ていた。 やがて、二人は目線を逸らす事無く、動き出した電車に流されるまま見つめ続けた。
あれは一体何をしていたのだろうか? そんな疑問が彼の中に渦巻いた。何かのスポーツ? あるいは流行りのギャグかもしれない。
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