浮気亭主と借金地獄妻(短編)
リビングに入るとさっきよりも濃いコーヒーの香りが鼻を霞めた。

「いい匂いだね」

「あなたの好きな国松堂のモカ、入れたわよ」

(やっぱり変だぁー!国松堂のモカは高い!いつも俺が買おうって言っても「そんな高いの買わなくてもいいじゃない!」って言って、バーゲンの、一番安い、どこの豆か判らないのを買う奴がなんでだよッ!)


「好きでしょ?」

「ん? あ、あぁ、好きだよ」


葉子はコーヒーを注ぎながら震える指を押さえた。


(…どうしよぅ。まずいわ。このままこの人がうちに居続けたらいつ≪あいつら≫が来るかも知れ無い。バレルわ)
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