シャボンの中の天使


朝からくくってやったポニーテールを揺らしながら、娘の葉菜(はな)が、シャボン玉に手を伸ばす。


シャボン玉は、逃げるように、葉菜の手から離れていって、空の彼方で、弾けて消えた。


「シャボン玉さんは、葉菜のこと嫌いなの?」


首を傾げて、そう訊いてくる葉菜の姿が可愛くて、いとおしい。


「どうしてそう思うの?」


「だってね。シャボン玉さん、いっつも、葉菜の手から逃げてくよ?」


葉菜は、そう言って、漂うシャボン玉を見つめる。


「葉菜は、シャボン玉さんと仲よくなりたいのか?」


さっきまで、シャボン玉を吹いていた夫、直哉が葉菜の小さな頭をぽん、と撫でた。


「うん!だって、葉菜ね、シャボン玉さんが大好きだから、お友だちになりたいんだ」


「そっか。じゃあ、どうすれば、シャボン玉さんと仲よくなれるかな?考えてごらん」

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