イージーラブじゃ愛せない



そんな夜と朝を経て出勤した会社。

「おはようございまーす」と事務室のドアを開きジョージと揃って中に入ると、カーテン部門の伝票ファイルを確認していた成瀬先輩と目があった。

そして私を見止めた成瀬先輩は、厳しい顔つきでこちらへ真っ直ぐ向かってくると

「柴木、急いで支度しろ。お前が担当したオーダーカーテン、寸法が違ってたと電話があった。すぐアフターサービス行くぞ」

早口にそう捲くし立て、私の肩を『急げ』と促すように叩いてから事務室を出て行った。


うそ。私、そんな新人みたいなミスやらかした?


家具屋にアフターサービスは付き物だ。長年使う生活に密着した高価な買い物。ちょっとでも気になる箇所があればお客さんが妥協しないのも当然だ。特に木材を扱ってる物は品質を一定に保つのは難しい。天然木の加工によっては、反りやひび割れなんか日常茶飯事だ。

だから、専門部にとって仕事の4分の1はアフターサービスと言っても過言ではない。みんなアフターサービスには慣れっこ。

けれど、たった今耳にしたのはその類とは違うアフターサービスの要請。いわゆる『失敗の尻拭い』。

一気にズドーンと私の気分が重くなる。

思わず眉間に皺の寄ってしまった私を見て、隣に立っていたジョージが

「大丈夫だよ。パパッと済ませてきちゃいなって」

と、励ましてくれたけど。私は胃が痛くなりそうな気持ちを消せないまま急いでタイムカードを押した。
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