イージーラブじゃ愛せない


茜ちゃんはちょっと内気な女の子だ。営業トークはきっちり出来るけどさ、友達作ったりするのはあんま得意じゃないみたい。

だから去年もサポートの俺にべったりで、それがきっかけで付き合っちゃったワケだけど。ま、今年は恋人ってワケじゃないから俺だけにべったりってのもね。

茜ちゃんの派遣期間は8月いっぱいまで。それまで仲イイ子とか出来て楽しくやれたらいいね、って思うよ。


そう考えるのってフツーだと思うし、何か間違ってるとも思えない。

だから俺は就業後の帰り道で、胡桃にもりんりんに頼んだのと同じ事を言った。


「女の子ってさ、同性の友達いないと淋しいじゃん?だから胡桃も良かったら茜ちゃんに声掛けてあげてよ」


胡桃は前を向いたまんま俺の話をあんまし興味なさげに聞いていたけど。


「……ジョージって本当に優しいよね。友達には」


クッと口角を上げると、こちらを向いてそう返事してくれた。


「まーね。でも俺が1番優しいのは胡桃だよ?知ってるっしょ?」


けれど、その言葉に返事は無く胡桃はただ微笑んでるだけで。ちょっと不安になった俺は

「あ、もしかしてこーいうの妬く?」

って聞いてみたけど。返って来たのは

「自惚れんなバカ」

の台詞と冷ややかな視線だけだった。



6月の夜は生ぬるい。

ふと見上げると、湿気った空気に夜空の星も不透明に滲んでいた。

まるで、俺の隣の胡桃の心みたいに。





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