イージーラブじゃ愛せない


約束通り、一緒に飲んでる間りんはずっと笑顔でいてくれた。

今日はこんな事があった、面白いお客さんがいて凄く楽しかった、そんなたわいも無い話を明るくしてくれる。

その話を私も笑顔で頷いて聞きながら、しみじみ思う。りんはとても賢いと。自分の明るさが友達を励ますと、ちゃんと役割を心得ている。それに徹しようとしているりんを見て、私は自分の心が確かに明るくなるのを感じていた。


けど、りんだって同い年のただの女の子だ。

役割に徹せない感情が溢れるのも、仕方がない。


1時間半ほど楽しく飲んで【もぎり】を出た後、少しの沈黙があった。車道を走る車の音と、遠くから聞こえる踏切の音がふたりの間に響いて。


「……ごめん……やっぱ約束守れない……」


肩を震わせて鼻を赤くして、りんは子供みたいな泣き顔で泣き出してしまった。


「なんでりんが泣くかなあ、もー」


鞄からハンカチを取り出し、アイメイクが崩れないようにりんの涙を拭ってやる。りんはヒックヒックとしゃくりあげながら

「だって、だって。私、柴木ちゃんの事もジョージの事も大好きだもん。だからふたりがそんな別れ方するの、すごく悲しいんだもん」

ストレートに私の胸に響く言葉を零していった。
 
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