イージーラブじゃ愛せない
言葉が返せない。この子に泣かれると、私は胸が詰まってどうしていいか分からなくなってしまう。
「柴木ちゃんもジョージも馬鹿だ。ジョージは柴木ちゃんのこと全然分かってないし、柴木ちゃんはずっと意地張ったまんまだし。どっちも大馬鹿だ」
りんに『大馬鹿だ』と叱られる日が来るとは。もうなんだか、本当に自分が情けなくなってきちゃった。
笑顔が似合う友達をこんなに泣かせて、心配かけて。私ってば何やってんのかな。
「ごめん。馬鹿だって分かってる。反省する。だから泣かないでよ」
「私じゃないでしょ。それを言うならジョージに言わなくちゃダメじゃん」
ああもう、痛い所ばっか突くな。りんは。
困ってしまった私はりんの丸っこい頭を撫でながら空を仰ぐ。素直な親友の言葉は私の心まであっさり溶かしてしまうから、見上げた星がだんだん滲んできてなかなか顔を戻せない。
「ジョージのこと、好きなんでしょ?」
「………………うん」
涙が輪郭を伝っていくのを感じながら閉じた瞼には、チャラくてウザい男友達の顔が浮かぶ。
イージーラブしか出来ない馬鹿ジョージ。そんなヤツの胸に飛び込むなんて、私には絶対出来ない。
戻れないほど好きになった時、あのへラッとした笑顔で別れを切り出されたらどれほど傷付くかなんて。
全部を曝け出した時、受けとめてもらえなかったら絶対立ち直れなくなるって。
恐くて恐くて、恋になんか絶対したくなかったのに。
馬鹿みたいに甘やかしてくれて、馬鹿みたいに優しくしてくれるから。
分かってくれてるって勝手に期待して、裏切られて、傷付いて。
それでも側にいたいから――頑なに友達でいるしかなくて。