イージーラブじゃ愛せない


けれど。

親父は膝を抱えて座っていた俺の肩を力任せに叩くと、そのままガッシリと掴んで言った。


「その代わり、俺は早苗さんの背負ってるもの全部引き受けるって誓ったよ。早苗さんの息子であるお前も、お前の抱えてる寂しい気持ちも全部だ。絶対いい親父になって、お前が笑って帰ってこられるような家族を作る、ってな」


その言葉に、俺は思わず親父の顔を見つめ目を丸くする。


「どうだ?まだ寂しいか?」


皺をいっぱい目尻に寄せながら聞いた親父の問い掛けに、俺は黙ってフルフルと首を横に振るしかなかった。

だって。凄いよ親父は。有言実行、本当に俺が笑って帰ってこられる家庭作っちゃった。

ありがとう、って思う。本当に、ありがとうって。


なんだかうっかり涙が出そうになって、俺は「へへ」って照れたような笑いを浮かべてから顔を膝に突っ伏した。


「……親父すげーなあ。そんな覚悟して俺と家族になってくれたんだ。なんかカッコいいなあ」


突っ伏しながらモゴモゴと言った俺の言葉に、親父は冬の空に響くような快活な笑い声をあげた。
 
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