イージーラブじゃ愛せない
私の質問に、風間くんはとても弱々しく笑って首を横に振る。
「なんで?ちゃんと風間くんの口からりんに言わなくちゃダメじゃん」
「うん。でも、僕も覚悟していたとは言えいざ聞かされたら想像以上にショックでさ。……今、りんかに言って目の前で泣かれたら、僕もつられて泣くかもしんない。そんなの情けなくて嫌だから」
初めて聞かされた男友達の本音の吐露に、私はあからさまに『意外だ』という表情をしてしまった。それを見て風間くんが苦笑いを零す。
「泣かずにりんかに伝えられるように、もう少しだけ気持ちを落ち着かせたいんだ。でも独りで抱え続けてるのも辛くて。だから、今日は柴木ちゃんに頼らせてもらった」
「それは構わないけど、ジョージじゃなくてなんで私?」
「だってジョージも泣くでしょ絶対。目の前で号泣されたら気持ち落ち着くどころじゃないって」
「確かに。だから私か」
「ごめんね。でも柴木ちゃんなら泣かないで聞いてくれると思った」
風間くんの言葉に、私も微笑み返して静かに頷く。
私たち同期4人を性格で分けたとき、私と同じラインの側にいるのは風間くんだと思う。
自分の気持ちを隠さず晒け出せるジョージとりん。弱い自分さえも肯定して素直に生きている。
そして私と風間くんはきっと、そんな彼らに羨望と少しのコンプレックスを抱く立場だ。
風間くんもそれが分かっているから、この話を1番最初に私に打ち明けたんだろう。
真っ直ぐになりきれない人間には、傷を舐めあう夜があってもいいと思う。
ふたりきりのテーブル席で、私たちは静かに言葉を交わしながらゆっくりと時間を流した。