イージーラブじゃ愛せない



風間くんの言った通り、りんやジョージは彼の辞令を知って泣いて悲しんだそうだ。

けれど、ふたりとも持ち前の明るさで気持ちを立て直すと、風間くんと共に過ごせる4月までの時間を大事に楽しんで過ごす事に専念した。


特にりんは、遠距離恋愛を楽しもうとポジティブに捉え

「私がどんな風に毎日を過ごしてるかを優吾にお届けする『りんかちゃんねる』って動画を配信しようと思うんだけど、どうかな?」

と斜め上な発想を相談してきたので、やんわり止めて置いた。


それでも、新潟に会いに行く費用を貯めるため早速節約を始めたり、千葉と新潟の中間地点で会える場所をせっせと探したり。りんは前向きに風間くんとの関係に向き合う事をやめない。


ある日、風間くんの為に自分と同サイズの抱き枕を作ろうと涙ぐましい計画をしているりんのキラキラした横顔を見ながら、私は何気なく感嘆を零した。


「偉いね、りんは。寂しさに真正面から向き合って。その強い前向きさ、本当に尊敬する」


私の言葉に、りんはふと真剣な顔になった後ヘニャリと微笑むと

「だってしょーがない。離れても寂しくても私は優吾がいいんだもん。だったらクヨクヨするだけ損でしょ」

いつもの明るい声でそう答えた。そして、こちらをまっすぐ見据え

「恋する乙女は強いよ、柴木ちゃん。気持ちさえ通じ合ってれば何があったって大丈夫。像が踏んだって壊れない」

とても強くそう言いきり、私の背中をバンと叩いた。


「だから、柴木ちゃんも頑張れ」

「何よそれ」


間もなく遠距離恋愛を迎える寂しさを抱えてても、私の心配が出来るほど、りんは強い。


そんな愛すべき友人の叱咤を受けながら、私はクスクスと肩を竦めた。
 
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