黄昏の特等席
　現在もそれは変わっていないことを言ってからかうために口を開きかけて、中途半端に閉じた。
　
「あなたは子どもの頃、どんなことをしていたの？」
「私は喧嘩をしていたな・・・・・・」
「そうなんだ・・・・・・」

　近所の子ども達とちょっとしたことで喧嘩をして、その度に手当てをしてくれる先生に怒られていた。

「食事はどうだった？　それもあまり変わりはないのか？」
「いいえ・・・・・・」

　グレイスが子どもの頃、食事のときは憂鬱になることが何度もあった。

「それと食事に時間がかかっていたよ・・・・・・」
「かなりか？」
「うん、そうね・・・・・・」

　子どもの頃は嫌いなものが多くて、なかなか食事が終わらなかった。

「何が嫌いだったんだ？」
「サラダ」

　それに魚料理のときも食べられるのに、時間がかかっていた。
　
「言ってくれたら、魚の身くらいほぐすのに・・・・・・」
「小さい頃から私の存在を知らないでしょ・・・・・・」

　次の食事のときに魚料理にすることを言い出したので、そこまでしなくていいことを言いながら笑った。

「魚を食べる気分ではないと？」
「いや、そういうことじゃない・・・・・・」

　肉料理だろうとしても、自分で食べることができるから、断っただけ。

「・・・・・・上手だよね」
「何がだ？」

　魚の身をほぐすことを小さな声で言うと、エメラルドが口元を引き上げる。

「やっぱり・・・・・・」
「自分でできます！」
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