黄昏の特等席
「今日は何の本にしよう?」

 後日、向かったところは教育の本で、どれを読もうか背表紙を左から右へ歩き進む。母国の教育の本がほとんどで、中には別の国のものもある。
 書架から一冊の本を出して、目次を開いた。教育や環境で子どもが良い方向にも悪い方向にも育つことが書かれているページを開いて、読み始める。

「いつまで私を待たせる気だ?」
「あっ!」

 肩に手を置かれて振り返ると、エメラルドが顔を顰めたまま立っている。どれくらい時間が経ったのかすら、確認をしていなかった。

「子ども、好きか?」
「うん」

 小さくて可愛らしいことを言うと、それはグレイスも同じであることを言われた。

「小さくないよ?」
「身長、何センチだ?」

 本当は百五十八センチだけれど、見栄を張って百六十センチと嘘を吐くと、エメラルドが笑い出した。

「嘘だな。絶対にもう少し低い」
「くっ・・・・・・」
「やっぱりな・・・・・・」

 図星なので、何も言い返すことができない。
 そんなグレイスを見てから、エメラルドは並べられている本に目を向けた。

「・・・・・・アクア、どんな子どもだった?」
「えっと・・・・・・」

 親からは本を読んでばかりで、自分から外に出かけることは少なかったことを聞かされた。

「昔のままか?」
「そうね・・・・・・」
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