黄昏の特等席
 次に目が覚めたときにはすっかり夜中になっていて、ぼんやりしたまま布団を見ると、エメラルドが眠っている。
 彼を起こさないようにそっとベッドから抜け出そうとしたとき、エメラルドが起き上がった。

「アクア? 具合は?」
「少しだけましになったよ」
「それは良かった」

 体温計で熱を確かめようとすると、エメラルドがグレイスより先にボタンを外そうとしているので、彼の手を叩いて後退する。

「痛いじゃないか」
「それほど痛くしていないよ」
「私は痛かった・・・・・・」

 文句を言う口調からして、それほど痛くなさそうだ。
 水差しの水を飲もうとすると、エメラルドがコップに注いで渡してくれた。それを少しだけ飲んで横になると、大きな手がグレイスの額に触れた。

「何か食べたいものはあるか?」
「ううん・・・・・・」
「本当に?」

 首を横に振ってからスープが欲しいことを言って、ふらつく足で立ち去ろうとした。

「こら、どこへ行く気だ?」
「そりゃあ・・・・・・」

 自分でスープを用意しようとすると、エメラルドがそれを止める。

「邪魔しないで・・・・・・」
「君ね・・・・・・」

 安静にしているように強く言われて、ベッドに寝かされて、エメラルドは出て行った。
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