黄昏の特等席
 急いでコートや財布、ハンカチなどを持って確認を済ませた後、彼女達が待つ門の前に向かった。

「お待たせしました」
「行きましょうか?」
「そうね」

 着いたところは花壇に囲まれた小さな喫茶店。
 ドアを引いて中に入ると、数名の客がいて、席は空いているところが多い。四人席に座り、コートを椅子にかけた。
 この店の人気メニューを注文してから、二人が恋愛についてグレイスに質問を始める。

「アクアはいないの? 好きな人」
「いるんでしょ?」
「い、い、いません!」

 慌てて否定しても、二人は嘘を吐いていると思った。

「・・・・・・怪しい」
「本当に・・・・・・」

 白状させようとした先輩の目の前に注文したデザートが来た。
 それを美味しそうに食べ始めたので、グレイスはゆっくりと紅茶を飲んだ。

「まだ質問は終わっていないわよ」
「あぁ・・・・・・」

 安心していた気持ちが顔に出ていたのだろう。
 好きな人が本当にいないのか、質問を繰り返されて、同じ答えを言った。

「どうしてそんなに?」
「だって、前より表情が明るくなっているから」
「私も見たとき、思ったよ」

 予想していなかった返事に、グレイスは戸惑いながら、自分の頬に指で触れる。
 触れたところがエメラルドに触れられたところと同じことを思い出し、グレイスは百面相をする。

「何よ、やっぱりいるんじゃないの・・・・・・」
「そ、そうではなくて・・・・・・」
< 130 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop