黄昏の特等席
　自分の部屋に紅茶がまだ残っている。ゆっくりと休んでから、それを飲むことも良いことを考えながら、屋敷へ向かう。

「・・・・・・あったかい」

　外と中の気温を感じながら屋敷に戻り、自分の部屋へ荷物を置いてから、窓の外を見つめながら歩いていると、楽しそうな笑い声を耳にして、窓を少しだけ開けて見下ろす。下には誰かいるものの、離れた場所にいるため、姿が見えない。
　しかし、声で誰と誰がいるのかわかってしまった。下にいた人達はエメラルドと知らない女であることを知ったグレイスは力強く窓を閉めて、逃げるように図書室へ向かった。
　もしかしたら、他の人もいたかもしれないと思ったときにはすでに図書室に着いた後のこと。そんなことを考えながらしばらくドアの前に座って、双眸を閉じているとき、ドアの揺れを感じた。

「あ・・・・・・」

　図書室のドアの隙間からエメラルドの靴を覗かせている。

「入れてくれないか？」
「は、はい！」

　立ち上がってドアから離れて、エメラルドを中に入れる。
　エメラルドはグレイスの顔を見ながら、目元を軽く指で拭っている。

「こんなところで居眠りをする気だったのか？」
「・・・・・・いいえ」

　様子がいつもと違うので、エメラルドはグレイスの手首を掴む。

「どうかしたのか？」
「どうもしない・・・・・・」
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