黄昏の特等席
「今度、私が何か菓子を用意しようか?」
「君が用意をするのか?」
「そうよ」

 どんな菓子が良いか質問する前に、彼は首を横に振った。

「それは私に任せてもらえないか?」
「いいよ・・・・・・」

 人に何かを贈ることが好きな上、グレイスを喜ばせたいので、エメラルドは好きそうな菓子を選ぼうとしている。
 グレイスはそんな彼の顔をただじっと見つめていた。

「アクアがいなくなったから、寒くなった・・・・・・」

 毛布と布団にしっかりと包まっている人の言う台詞なのか、疑わしい。

「私にも分けて」
「どうぞ」

 彼は毛布と布団を持ち上げながら、グレイスが眠ることができるスペースを用意した。
 毛布と布団を渡してくれないエメラルドを凝視していると、早く横になるように促され、グレイスは彼に従った。

「あったかいな・・・・・・」
「そう?」
「本当にあったかい。それに・・・・・・」

 エメラルドはグレイスを抱きしめた状態で、髪に鼻を近づけている。

「良い香り・・・・・・」
「寝るんだったら、早く寝てください」
「ああ・・・・・・」

 グレイスがエメラルドの目を手で隠すと、数分も経たない間に規則正しい寝息が聞こえてきた。

「・・・・・・寝ちゃった?」

 声に反応しない彼に、グレイスは男の髪が目にかかっているので、起こさないように触れて払った。
 さっきまで起きていたのに、すぐに眠ったので、やはり子どもみたいなところがあり、くすりと笑った。
 ぐっすりと眠っているエメラルドの頬に触れて、体温を感じた。

「おやすみなさい」

 その場から離れることを忘れて、彼と同じように目を閉じた。
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