黄昏の特等席
 それでも女は他の者達が話していたことと矛盾しているので、おかしいと思っている。

「そっちが間違ったことだよ。勘違い」
「でも~」
「僕はあの子と一緒にいて、僕が君に本当のことを言っているんだよ?」

 実際に頬に傷がついているところを数人に見られたので、そう思い込んでしまっただけ。
 そこまで言うと、女はクルエルを信じ、頬に手を添える。

「痛かったですよね~?」
「そうだね・・・・・・」

 思った以上、グレイスに力があることに驚かされたのは殴られたクルエルだけ。
 邪魔者を殺してくれた女にまだ礼をしていなかったことを思い出したクルエルは彼女が自分を裏切らないよう、礼をすることを耳に囁いた。

「いつも力を貸してくれるからね、君に何かをしてあげたい」
「嬉しいですわ~」

 喜んでいる女に強請るように言うと、彼女はクルエルの首に腕を絡めてくる。

「私はいつだってクルエル様が欲しいですわ~」
「僕を誘うことが上手だね」

 クルエルは媚びるような笑みを向けてくる女をベッドに押し倒した。
 外にいるミルドレッドはこれ以上ここにいてはいけないことを判断して、人に見つからないように静かにその場を立ち去った。

「そういうことだったの・・・・・・」

 何もかもクルエル達が仕組んだことだった。
 隠されていたことに衝撃を受けながら、グレイスをもっと早く安全な場所に連れて行かなかったことを後悔する。
 クルエルの考えていることややっていることはあまりにもおかしい。とてもじゃないが、これ以上彼に従うことなんてできなかった。
 自分だけはグレイスの味方のままでいることを、ミルドレッドは心に決める。
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