黄昏の特等席
「何を・・・・・・ですか・・・・・・?」

 どんなことがあっても、クルエルの恋人にならないことを。
 
「でも・・・・・・」
「お願いします。グレイスお嬢様」
「ミルドレッドさん・・・・・・」
 
 ミルドレッドはグレイスの小指に自分の小指を絡ませて、約束を交わした。
 以前、ミルドレッドがラッドに電話をしたとき、グレイスのことやクルエルのことなどを話して相談すると、ラッドはある村に友達がいるので、そこにグレイスを連れてくるように言われた。
 ラッドの実家だと、グレイスがいなくなったとき、クルエルに怪しまれる可能性があるため。ミルドレッドが行ったことないところなので、場所もしっかりと教えてもらった。
 ミルドレッドはクルエルが不在の機会を狙って、グレイスと逃げ出した。

「ミルドレッドさん・・・・・・?」

 周囲を何度も気にしながら、ミルドレッドはグレイスの手を引いて行く。

「どこへ行くつもりなのですか?」
「ここにはもう戻りません」

 彼女は安全な場所に連れて行くことだけ伝えて、彼のことを話さなかった。
 ミルドレッドは信頼できる使用人達にも協力してもらい、シェリダン家から出ることに成功した。

「外の空気、久しぶりです・・・・・・」
「そうですよね」
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