六本木グラスホッパー
始まりの話。

晴れ渡った青い空なんて、
ボクは一度も見たことがない。


テレビとか、雑誌に載っている写真でなら見たことはあるけれど、ボクは生まれてから一度もこの街から出たことがないから、今までもそしてこれからも、おそらくこの目で青空を見ることなんて無いのだろう。


街の真ん中にそびえ立つ大煙突からは、休むまもなく灰色の煙が吐き出され空を覆う。

水は汚染されて、浄水器を通さなければとてもじゃないけれど飲むことなんてできない。



虚ろな目をした浮浪者が路地裏に寝転び、
聞こえてくるのは列車のレールが軋む音と、銃声と、公安特殊部隊の警報音。




そんな、どうしようもない街。煙町、六本木。



けれど、ボクはこのどうしようもない街を愛してやまない。



だって、ボクはこの街で生まれ、
そして、生きてゆくのだから。


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