六本木グラスホッパー
唯浜メイは、常に一人でいる。


彼女が誰と親しいのか、ボクは知らない。


多分親しくしている生徒なんていないんじゃないか。
彼女は人を寄せ付けない。誰も彼女には関わろうとはしない。



それは彼女の家庭環境に原因があるんだと思う。



彼女の父親は煙町でも名の知れたマフィアのボスだ。詳しくは知らないが、彼女の父親はこの界隈で絶大な力を持っているという。


学校には黒塗りの高級車で送り迎え。普段は数人の恐持てのマフィアが、彼女のお付として常にそばにいるという噂を聞いたことがある。
当然、ボクは彼女とは話したことすらないのだけれど。



唯浜メイは、人ごみに紛れてすぐに見えなくなった。
どうやら一人だったようだ。彼女の端正な顔立ちと小奇麗な服装は、この闇市には似つかわしくなかった。



「お守りの若い衆はいねえじゃないか」


「そうみたいだね。こんな所で見かけるなんて意外だったね」



ボクとアラタは彼女の後を追おうとは特に思わなかった。
すぐにまたラムネを飲みながら闇市の屋台を見て回った。





彼女の行方が分からなくなったと聞いたのは、次の日の学校に登校してからのことだった。










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