俺だけみとけ!
急に声のトーンが下がったひぃ…
前を歩いていたのは…
和哉先輩と叶恵さんだった…―
久しぶりに見た。
私と2人の時じゃぁ、和哉先輩はあんな無邪気な笑顔なんて見せてくれなかった。
横顔だけでわかるよ…
叶恵さんといる時の方が幸せだって。
あれから何度も想ったけど、もういい加減前向かないと…
私、いつまで和哉先輩の背中を追いかけてるんだろ…
バカみたい。
いつの間にか震えていた私の左手を、ひぃが握ってくれた…―
大きな手のひらで私の手を包み込んでいた。
その手は温かかった。
「大丈夫。
私、もう泣かないよ」
『え?』
「だって、今はひぃが隣にいるもん!
もう私も前向かなきゃね?」
そうだ。
いつまでも立ち止まってたら、時間だけが無駄に過ぎていく。
『明里なら必ず大丈夫!』
「ありがとね!ひぃ」
ひぃの前髪が風に揺れて目にかかった…
月明かりがひぃを静かに照らす。
ひぃの横顔にドキッとした私がいた…
―明里 side end―