恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「遠慮するな」
とても電車の中でする会話とは思えなかった。

「本当に話だけで……」


「そうだな。腕も足も毛は多くない方だ。それと胸毛は無い」


「はあ、そうですか。わかりました。なんかすみません」

頭を下げると、課長が少し笑った。

「へんなことを聞くなぁ。ユイカは……まあ、いい傾向だな。俺に興味が出てきたんだから」


「はあ、そういう訳でも無いですが……」

「ユイカ、もたれていいぞ」
課長が私の頭に手をやり、自分の肩にもたせかける。

ーーー別にもたれたくないんだけど。

仕方なく課長の肩に頭をのせた。


ーーーチョット変な感じ。なんだろ? 彼氏でも恋人でもない。思えば上司なのに。

ちょっと前までは、ただの上司と部下だった。


ーーーあのマンションに越してからだ。こんなに上野課長と親しくなったのって。
いいんだか、悪いんだか。

まあ、いいや。今は、このまま頭を乗せておこう。


うとうとして、瞼が重くなってきた。
手を握られた上に、もたれかかるものがあると、なんだか温かでらくちんだ。

いつの間にか睡魔に襲われ、私は課長の隣ですっかり居眠りして電車に揺られていた。



★教訓

うぬぼれ男は、ケチで体毛が薄いようだ。そしてスキンシップ好き。
そういう男には用心すべきだ。
そうでないと、いつの間にかスキンシップするのが普通だと思わされかねない。



< 91 / 223 >

この作品をシェア

pagetop