2-俺様の宝物
誕生日
最近俺様の家の近所に見知らぬ姉ちゃんがいるんだ。

俺様はあの姉ちゃんは、魔法使いだと思っている。

そいつの名前は最近知った。「桃香」という。
うちのこうるさい姉ちゃんと仲良くなったらしく、この間も一緒に「しょっぴんく」なるところに行ったらしい。なんのことやら。
たしかにピンクのフワフワしたスカートを履いていたな。

うちの姉ちゃんが言うには、桃香の誕生日がもうすぐらしい。
そうか、新しい魔法を手に入れるつもりだな。

……誕生日ってのは、やっぱりなんかお祝いするんだろうな。
よし。俺様だって、なんかプ、プ、プレゼント、もっていってやろう。

こんなのみたことない!
なーんて言われちゃうものを、実は持ってるんだ。俺様の宝物だけどな、もったいないけどしかたない。


窓から桃香の横顔が見える。
目、おっきいよな……イヤイヤ、HPを吸い取る目だ。攻撃力がダウンしちまう!目は見るな。

よし。「いんたーぽん」押すぞ!

ピンポーン

桃香が窓から離れる。足音がする。また、何か魔法かけやがったな!心臓が口から出そうだ。オェ

ガチャと扉が開くと、伏せ目のまつげがふわっと上がって大きな目がこっちを見た。
目、合わすな。

「あら?由香の弟さんよね。どうしたの?」

髪をかき上げるなよ。だめだ!魔法をかけられた。

「あ、あああ、あの……」

口封じの魔法か!声が出ない。
とりあえず、この、俺様の宝物を……もうここに置いて行っちゃえ !

「え?ねえ、これ何?」


よかった。「にげる」は使えた。
自分の部屋に戻ってこられた。あぶねえな。
でも、開けてみたかな?どんな顔したかな?


「勝太‼」

うわわ、姉ちゃんの声だ。なんか怒ってるぞ??

「また桃香に意地悪したでしょ!いいかげんにしなさいよ!」

「な、なにがだよ」

「あんなにでっかいカエル、桃香の家の前に置くなんて、何考えてんのよ!たまたま、健が通りかかったから捨てに行ってもらったけど、気持ち悪いったら!」

「え?すてちゃったの?」

「あたりまえでしょ!」

宝物だったのに……。姉ちゃんのばかやろう !

「どこ行くの?ちゃんと桃香にあやまりなさいよ!」


あいつ、健兄のやつ、どこに捨てたんだよ!ゆるせねえ!

ドカッ

「あ、ごめんなさ……健兄ちゃん!」

「勝太、どこ行くんだよ」

「お、俺のカエルは!?どこにすてたんだよ!俺がせっかく……」

「落ち着けって、ここにあるよ。ほら」

お、俺様のカエル……。

「おまえさあ、女の子にカエルなんかやるなよ。あいつらはな、これの価値なんか分かんねえんだよ。誰かにやるなら、俺にくれよ。すっげえな、このカエル。ウシガエルかなあ」

「や、やんねえよ!」

なんだよ、ニヤニヤすんなよな。

「泣くなよ」

「うるせえよ!あっちいけよ!」

「宝物なんだよな、おまえのさ」

「……」


健兄ちゃんは、しばらくそばにいてくれた。
なんか、もしかしたらいい奴かもって、少しだけ思った。
でも、帰り際に言った言葉が許せねえ!

「心配するな、桃香は俺が幸せにしてやるよ」

だとー???

やっぱり俺様はあの兄ちゃん嫌いだー!!!


おしまい
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